~壱~

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「なら、調べてみるか?」 賢斗の答は想いの外、単純だった。 樹央が頭に『大した事は無いけど』と付け、今朝のニュースを観た後から感じていた“ちょっとした疑問”を話し、返って来たのはその言葉。 「………へ……?」 「だから、気になるなら調べてみようって、言ったんだ」 「あ、いゃ、聞こえなかったわけじゃない……」 「そうか?なら、さっさと行くぞ」 口を動かしていても手は休めなかった賢斗、既に掃除を終わらせ自分の鞄と樹央鞄を手に教室の外へ。 「ッ!ちょ、っ一寸待てよ!」 慌てて教室の鍵を閉め、先を歩く賢斗を小走りで追う樹央。 「調べるって、どうやって?」 「サイコメトリー。お前の能力(チカラ)を使う」 追い着いた樹央が尋ねれば、さも当然とばかりに賢斗が答える。 「なッ!お前……」 賢斗は平嘉高校に通う生徒の中で樹央の能力を知っている唯一の存在。 それと同時に樹央の能力故の哀しい過去を知る存在でもある。 「もちろん、強制するつもりは無い。その能力はお前の戒めその物だ、それを使うとなれば多大な負担が罹るだろうな。 それでも、お前がやるなら協力は惜しまないつもりだ」 『どうする?』と問掛ける賢斗はひたむきに真剣で暫しの逡巡の後、樹央は…… 「………分かった、やるよ。協力してくれ」 「了解」 .
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