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「で、なんで、こうなっているんだ?」
両手に買い物袋を下げた樹央がぼやくのは、自身が住むマンションの前。
「成り行き?」
それに応える賢斗も樹央同様に買い物袋を下げている。
「はぁ~、仕方無いか……」
━━約一時間程前━━
「俺の能力を使うのは解ったけど具体的には何をするんだ?」
学校を出た樹央が今後の動向について賢斗に尋ねるも、返って来たのは「何もしない」という言葉のみ。
「はぁ?何もしないって、そんなんで何が調べられるんだよ!?」
期待が大きかった分、賢斗の言った言葉にショックを受けた樹央が声を荒げれば、賢斗は眉を顰めながらも口を開く。
「そう、喚くな。
オレの言い方が悪かったな。
少なくとも今日は何もしないって意味だ」
「だから、それが何でなんだよ!!」
「意味が解らない」と喚く樹央を賢斗は片手で遮る。
「幾ら騒がれてないとは言え、アレは立派な殺人事件だ。
警察が動いて無いと思うか?
だから『今日は』何もしない」
「……解ったよ。
だけど、『明日から』は何をするんだ?」
また、樹央が尋ねると賢斗は渋い顔で答える。
「事件現場に出向いてサイコメトリー出来そうなモノを片っ端から視る予定だ。
………けど、」
「けど、……なに?」
「確かにこのまま何もしないのは時間が勿体ないよな……
ぅ~~ん……」
そう言って唸る賢斗を樹央は下から覗き込む。
「ならさ、俺の家にくるか?」
「良いのか?」
「あぁ、どうせ誰も居ないしな。
明日からの事を詳しく打ち合わせするには最適だろ?」
肩を竦めて笑う樹央を見て、賢斗は一瞬だけ哀しい顔をしたが、直ぐにそれを快諾した。
(なぁ樹央。
お前は自分で気付いてい無いのか?
自分の家に誰も居ないと言った時にこれ以上無いってくらい悲しい顔をしていた事に本当に気付いて無いのか?)
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