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「ただいま…」
つい一時間程前に通った経路を同じ様に通り、玄関のドアを開けた樹央は誰にとも無く呟き、荷物を下ろす。
賢斗も樹央に続いて中に入り、ドアを閉める。
その音を聞き付けたのだろう。
リビングからトタトタと足音が廊下を渡り、玄関に近付いて来る。
「おむぅらいすぅ~!」
「ッうゎ!」
声と共に現われたサキが樹央にタックルよろしく飛び付いた。
樹央はタックルの勢いに耐え切れずに仰向けに倒れ、頭を床にぶつけてしまう。
それを見ていた賢斗は苦笑を噛み殺し、倒れた樹央の腹に馬乗りしているサキを抱き抱え退かしてやる。
「痛ってぇ~」
「ククッ……大丈夫か?……クックッ」
打付けた頭を押さえながら、ムクリと上半身を起こして呟く樹央に賢斗は、未だ苦笑を噛み殺したまま、手を差し延べる。
「大丈夫に見えるか?
だったら、その目は節穴だ」
苦笑を噛み殺す賢斗に手を借り、立ち上がった樹央は恨めしそうに「眼科にでも行ってこい」と呟く。
しかし、賢斗は気に止める様子も無くサキを連れてリビングへ進む。
残されたのは、樹央と……
「これ、一人で持てってか……?」
……四つの買い物袋。
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