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結局、早苗は樹央に無理矢理押し付けられた、黒のパンツとTシャツに着替え食卓に着く事になった。
「むっ、……鬱陶しい」
始終そう言っては服に手を掛ける早苗をなんとか制し、済ませた食事は皆好評だった。
「じゃ、そろそろ帰るな。
メシ美味かったよ」
賢斗がそう言って立ち上がった時には既に街に夜の帳が降りた後だった。
早苗は食後浴びる程の酒類を呑み眠ってしまい、サキも燥ぎ疲れたのか早苗の後を追った。
「なんだ、帰るのか? 泊まっていっても良いのに」
「……ふっ。言葉に甘えたいとこだが、やる事が有るしな」
樹央が呼び止めるも、賢斗は軽く笑って応えると、安らかに眠るサキの頭を優しく撫でて「また明日」と言い残し、出て行ってしまう。
「また明日……か」
閉ざされた扉に向って呟くと、樹央はゆっくりと背伸びをし就寝の準備に入る。
夜の闇が支配する月明りの下彼等の輪廻が巡り始めた事を悟るのは暫く後の話。
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