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もう一度、寝直そうとベッドに近付いた樹央はその異変に気付く。
不自然に盛り上がったシーツ。
それが規則正しく、僅かに上下している。
「スースー……ムニャ?」
音を立てない様にソッと、シーツを捲ると、ピンク色のパジャマに身を包んだサキが気持ち良さそうに寝息を立てていた。
「気楽そうで良いな」
あまりに気持ち良さげに眠るサキの姿に樹央は脱力し、ベッドの端に腰かける。
「生きることの意味なんて、誰にだって解りはしない。それでも、生きて居たいんだ。……たとえ、この存在全てを否定されたとしても」
哀しげに樹央は呟き、サキの髪にソッと指を通す。
それは予想以上に滑らかで、とても細く、繊細だった。
だからだろうか、いつもならば決して口にする事は無い心の内を吐露してしまったのは。
「……俺は寂しい。家に帰っても誰も居ない、家族の温もりを感じる事が出来ない、友達が出来ても本当の事を話せない、心を開く事が恐いんだ。
近付くほどに疵付ける
疵付けるたびに疵付く
俺は、こんな能力(チカラ)なんて欲しく無かったんだ。
ただ、普通で良いから、温もりが欲しい。
家に帰れば笑顔で迎えてくれる家族が居て、隠し事なんてしないで良い友達が居る。
それがどんなに尊い事か、孤独ですらないお前に解るはずなんて無いよな?
お前が羨ましいよ……」
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