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サキが再び眠りに着き、落ち着いたところで早苗は口を開いた。
「確かに、樹央が言っていた事は正しい。 私は言葉が足りない。その通りだ。
だかな、樹央。お前は自分でサキの事を知ろうとしたか?」
「……ぐっ」
早苗の言った事に対し、樹央は言葉が詰まる。
早苗の言った通り、樹央は、早苗がサキについて説明してくれると決め付けて、自分からサキの事を知ろうとはしていなかったから。
だが、早苗はそんな樹央の様子に気付かないかのように、サキをベッドに寝かせると、踵を返して顔だけを樹央に向ける。
「まぁ良い、今回は私が話す。
着いて来い」
「なっ!? ちょっ」
それだけを言うと、早苗はさっさと部屋を出て行く。
その後を樹央は慌てて追うと、リビングに入って行く早苗の姿が見えた。
それに従ってリビングに入ると、早苗は既にテーブルの椅子に腰掛け、テーブルの上に所狭しと並べられている缶ビールの一つを開けて呑んでいた。
「……はぁ~~」
昨晩、浴びる程に呑んでおいて、まだ呑むのか。それも、こんな早朝から。
そう思うと、つい、深いため息が口を吐く。
「何をしているんだ? 早く座れ」
早苗にそう促され、樹央は四人掛けのテーブルに早苗と対角に座る。
その間にも早苗はビールを三本開けていた。
「さて、何から話したものか……」
樹央が椅子に座ったのを認めると、早苗は暫し逡巡する様に唸る。
樹央はそれを急かす事無く、静かに待っている。
やがて、早苗は意を決した様に口を開く。
「そうだな……」
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