~参~

6/11
前へ
/99ページ
次へ
サキが再び眠りに着き、落ち着いたところで早苗は口を開いた。 「確かに、樹央が言っていた事は正しい。 私は言葉が足りない。その通りだ。 だかな、樹央。お前は自分でサキの事を知ろうとしたか?」 「……ぐっ」 早苗の言った事に対し、樹央は言葉が詰まる。 早苗の言った通り、樹央は、早苗がサキについて説明してくれると決め付けて、自分からサキの事を知ろうとはしていなかったから。 だが、早苗はそんな樹央の様子に気付かないかのように、サキをベッドに寝かせると、踵を返して顔だけを樹央に向ける。 「まぁ良い、今回は私が話す。 着いて来い」 「なっ!? ちょっ」 それだけを言うと、早苗はさっさと部屋を出て行く。 その後を樹央は慌てて追うと、リビングに入って行く早苗の姿が見えた。 それに従ってリビングに入ると、早苗は既にテーブルの椅子に腰掛け、テーブルの上に所狭しと並べられている缶ビールの一つを開けて呑んでいた。 「……はぁ~~」 昨晩、浴びる程に呑んでおいて、まだ呑むのか。それも、こんな早朝から。 そう思うと、つい、深いため息が口を吐く。 「何をしているんだ? 早く座れ」 早苗にそう促され、樹央は四人掛けのテーブルに早苗と対角に座る。 その間にも早苗はビールを三本開けていた。 「さて、何から話したものか……」 樹央が椅子に座ったのを認めると、早苗は暫し逡巡する様に唸る。 樹央はそれを急かす事無く、静かに待っている。 やがて、早苗は意を決した様に口を開く。 「そうだな……」 .
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加