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『次のニュースです……』
朝食を食べながら、いつもの習慣で点けたテレビが淡々と報道を続けている。
先程から伝えられるのは宗教団体を名乗る者達による大規模なデモ行進や幼女だけを狙った連続誘拐等どれも暗いものばかりだ。
『──昨夜未明、刺殺死体が平嘉市内の路上で発見されました』
何気無くテレビを観ていた樹央の耳にニュースキャスターの淡々とした声が届く。
死体は三十代前後の男性であること。
兇器は刃渡り30センチの刃物であること。
死因は腹の刺傷の失血死であること。
それだけを告げたキャスターは直ぐに次のニュースを伝える。
だが、樹央の耳にはその声は届いておらず、樹央は一人物思いに耽ていた。
理由なんて何も無い、ただ何故か気になってしまう。
そんな言い様の無い感情に囚われ、気付けば既に家を出なければいけない時間になっていた。
「いってきます」
返事など無いと分かっていてもつい口に出してしまう言葉を残し、樹央は家を出る。
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