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爽やかな印象の水色のタイルが敷き詰められたシャワールームに入ると、朝が早いからか自分以外の隊員は居なかった。
誰もいない浴室を広く感じながら、響はシャワー個室の外側にあるドア横のフックに服をかけ、シャワーの蛇口を捻る。
先に冷たい水が流れ、それで顔を洗うと少し寝惚け気味だった頭が覚める。
温水に変わったところで全身を濡らし、汗を流していると、フックにかけられた上着のポケットからけたたましい着信音が浴室で反響した。
「んあ?」
響は手さぐりでポケットをまさぐり、小型の薄型液晶通信機を取り出して応答ボタンを押すと、液晶画面に響もよく知っている飴色の髪を緩く三つ編みにし、穏やかな印象の女性が映し出された。
「なんや雅(ミヤビ)か、おはようさん」
通信画面はそのままに、個室の隅に設置された三角の台に通信機を置く。
ここからなら肩から下は見えないだろう。
暫く映像がノイズがかっていたのが段々鮮明になり、スピーカーからは相手の声が聞こえた。
「おはようございます、蓮見班長、本日の任務についてなんですが…って…きゃぁぁぁぁあぁあああぁあああ!!!!」
「い゛っ…!?」
突然の甲高い悲鳴に、響は思わず耳を塞いだ。声が反響するこの場所で、至近距離でこの悲鳴をあげられ、鼓膜がやられたんじゃないかと思った。
「だぁあ!!いきなり叫ぶなや、耳がいかれるやろが!!」
「だだだだだだって響さん、はだ、は、裸で…っ、びっくりして…!
…と、というか、シャワールームなんですか?!
そこでの映像通信は禁止のはずですよ!!」
「へいへーい…」
手にもっている書類で顔を隠しながら、雅は耳まで真っ赤にして抗議した。
響自身は下を見られた訳じゃあるまいし、と雅の反応を過剰に思いながらも、ため息混じりに通信機を操作し、映像通信から音声通信に切り替えた。
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