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蒼碧の森-Raggi di prinavera-
「そなたがアガレス卿か、私は…」
「聖龍のサイカ、私の妻になるとかいう酔狂な女だろう?」
「そなたの妻になることは酔狂なことなのか?」
「あぁ、酔狂だ。正気の沙汰とは思えん」
「私は正気だ」
「周囲はそうは思わぬ」
「私は私の意志でここにいる、アガレス卿」
「卿というのは止せ」
「そなたは卿だ」
「アガレス」
「え」
「私はアガレス、お前はサイカ…それ以上でもそれ以下でもない」
それが最初にこの物語の主人公たちが交わした言の葉たち、それに意味があったのかそれともなかったのか、それはこの物語を紐解く貴方がその心で感じればいい。
私はただ、貴方が紐解くこの物語を導くものに過ぎないのだ。
それではここで、この物語の主人公たちを紹介するとしよう。
正統な血筋をその身に宿しながらも、獣牙王バルバトスの兄としてこの世に生れ落ちた瞬間から、数奇な運命を辿ることを余儀なくされたもの。
それがアガレス、獣卿とも煉獄卿とも呼ばれる狂喜と殺戮を好む男。
そして同じく、正当な血筋をその身に宿しながらも、聖龍王リュウセンの愛娘としてこの世に生れ落ちたがために、アガレスの慰みものとしての運命を辿ることとなったもの。
名をサイカ、その美しい蒼い髪から娘は蒼龍王と呼ばれるようになる、だがそれはまだ先のお話。
物語は始まった、それは終わりに向かってか…それとも新たなる始まりに向かってか…
蒼碧の森
-Raggi di prinavera-
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