第二十三章 最終決戦(後)

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ひときしり笑った後の源蔵の言葉はあまりにも衝撃的だった。   富国強兵。これを意味するのは……   「あんた、戦争する腹積もりか!?」   「羅国はいまやシンの属国になりつつある。大昔の戦争に敗北した事実をいまだ我が国はひきずっておるのだ。隠力という人体兵器を手に入れた今こそ、羅国は立ち上がり、勝利せねばならない」   狂っている。戦争の愚かさは源蔵も理解していないはずがない。やっと終わる事ができたあの争いを、今度は世界に向けようというのか。   「師よ、それは本当に師の本心か?」   「これはわしの野望なのだ。蓮よ、止めたければわしを殺すしか方法はないぞ」   「私は…………!?」   それは瞬く間に起こった。騒音とも呼べる、耳が曲がるような高い鈴の音。そんな非常識な音が部屋中に鳴り響いた。   「まともにお前達三人と戦うのは得策ではない。逃げさせてもらうとする」   扉は急に押し開けられ、騒然とした兵達の声が背後から伝わってきた。 源蔵は俺達の目の前を素通りし、この部屋を去ろうとしている。   「あの三人を殺せ。奴らは総務大臣であるわしを殺害しようとした」   「はっ!!かしこまりました!!」   「さて、お前達に何ができるか、見せてもらおう」   それを最後に源蔵は消えた。気配がなくなり、同時に例の金縛りも解かれる。   振り向いてから考える暇はない。俺は相手を遮るように、即座に炭素結界を左右の壁を通して展開した。   「吉宗、蓮、そこの窓から脱出しろ!!俺もすぐ行く!!なんとかして源蔵を捜すんだ!!」   「わりぃな!!」   「わかった!!」  
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