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「最後?」
こちらの疑問には聞く耳持たず、颯は両手の指にはさんだ計八本の短剣を一斉に放ってきた。
直ぐさま俺は偽剣を生成し、回避と打ち払いを同時に行う。
その間にも、颯はかなり接近してきている。近接戦闘型の人間なのか。なんとも面倒な相手だ。
ありとあらゆる方向から斬りかかってくる二本の短剣は、しかし影ではなく俺自身を標的としていた。
「くっ……」
これだけ近い距離から素早く攻撃を繰り出されると、受け流すことはかなり難しい。それにたとえそうしたとしても、奴には影がある。
「フフッ、随分やりづらそうだね」
「そうだ……なっ!!」
手段を選んではいられない。指先に力を集中させ、できるだけ近くまで迫った時を狙い、水素弾を放出した。
だが相手もそう簡単にはやられてはくれない。周囲の影を利用し、不規則な動きでその攻撃を回避していく。
「危ないね。これじゃあ迂闊に前に出られない」
奴は影の上に立っており、いつでも移動できる状態にいる。
地の利ではあちらに分がある……か。
「……俺の目的はあんたじゃなくて源蔵だ。どいてくれ」
現在どちらも攻めあぐねている状況だ。このままだと時間だけが無為に過ぎていく。それは避けたいと思い、説得はできないかと俺は奴に話しかけた。
「それを邪魔するのが最後の命令さ」
「それじゃあもう一度聞く。最後というのはなんだ?」
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