第二十四章 終焉の果て

2/12
前へ
/339ページ
次へ
最上階。ここは遥か昔、初代皇帝であった叉流奈が自分のためだけに造り上げた道場。   彼女の流派、羅刹流は人間を破壊するためだけに編み出された羅国最強の格闘術だ。   現在帝国には皇帝はいない。後にも先にも皇帝は初代しかいないことになっている。   それでも帝国が共和国と名乗らないのは、皇帝叉流奈が不老不死であったからだと、そう教えられている。   彼女がシン国との戦いで行方不明になっており、生死もわからぬまま時代だけが過ぎ、それでもなお彼女がどこかできっと生きている。そんな思想の元、この部屋は何百年経っても色褪せず、当時のままにしている。   羅刹流は叉流奈が数人の弟子をとり、そこから脈々と伝承され、そして今、二人の伝承者がここにいる。   師は覚悟しているのだろうか。私にはわからない。わかりたくもない。   何故なら、ここは羅刹流継承者にとっては特別だから。   帝国城最上階、皇帝の間。それは別名『死合いの間』とも呼ばれている。   『死合い』。それは師と弟子が互いに闘い、双方どちらかが死ぬまで続く、古い習わしでもある。   叉流奈がいた頃には当たり前のように行われていたこの儀式も、彼女がいなくなってからは禁忌としていつしか忘れ去られていった。   この瞬間までは。
/339ページ

最初のコメントを投稿しよう!

695人が本棚に入れています
本棚に追加