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「おっと……」
走っていた足が急にぐらつく。ほんの僅かな時間でしかなかったが、地震でも来たような揺れを感じた。
発信源が近かかったような気がする。ひょっとすると最上階……か?
幾分か走る速度を速め、残る階段を上がっていく。
道中、帝国兵に出くわさなかったのには不思議に思ったが、今はそれに構ってはいられない。出ないなら出ないにこしたことはない。
「……あれは」
最上階への最後の階段、その入口付近に、見たことのある人物が道を塞ぐようにして仁王立ちしている。
ある程度の距離をとり、俺は一旦立ち止まった。
「……あんたは味方なのか?それとも敵なのか?」
蓮を見逃してくれた張本人、禅は答えてくれない。
しかしあの巨大な斧を肩に担いでいるからには、すんなりと通してはくれなさそうだ。
「主殿の闘いの邪魔はさせぬ」
「蓮と、か……」
俺は瞬時に偽剣を生成し、禅と相対した。
「羅刹の武人の闘いに水を差すというのか」
「殺されるのをわかってて見過ごせるか。意地でも通らせてもらう」
手の平に水素弾を凝縮させ、球を作り出し、直ぐさまそれを禅に投げた。
爆発はすぐに起こり、粉塵を撒き散らし、部屋一帯が茶色がかった煙に覆われる。
当てるつもりは毛頭ない。これはあくまで目眩まし。
姿が見えない内に俺は死角から攻め入った。迷いなどない。見えなくとも相手の位置は必ず決まっているからだ。
間合いまで入り、偽剣を上段から、煙を切り裂くように斜めに振り下ろす。
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