第二十四章 終焉の果て

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感触はあった。ただ、それに手応えがあったかと言えば違う。   「そこか!!」   「チッ……」   相手の攻撃が来る前に素早く間合いから抜ける。煙も段々とおさまり、視界がいつもの具合に戻る。   やはり禅はあの場から離れていなかった。   「隠力……身体を硬質化する力か。厄介なモノを身につけている」   禅の行動制限を利用してみたんだが、あの隠力では逆に禅に有利に働く。   おそらく俺の力ごときでは梃子でも動かないだろう。   「我にお主を倒す意思はない。だが、ここだけは何人たりとも通らせぬ」   「……これだけは使いたくなかったんだけど」   何をしても埒があかない。俺の直接攻撃で倒れてくれないのなら、相手から勝手にそうしてもらうしかない……   「あんたは義理がたい奴だ。吉宗にしても蓮にしてもそう。あいつらは人情を重んじている」   「む?いきなり何だ?」   意味のわからない俺の言動に、禅は警戒心をより強くする。   まぁ今からすることには支障はない。   「それは時として弱点となる」   「!?……ヌゥ、これ……は……」   禅の強靭な脚は嘘のように崩れ落ち、受け身もとれないまま前のめりに伏した。   「毒……か……」   「速効性の高い、神経を麻痺させるやつだ。あんたのような体力のある人間なら、一日あれば元に戻れる」   「いつ……こんなものを……」   「あんたの身体を治しているとき、保険として細工しておいた。俺の隠力の作動で毒が回るようにと」   「……なんと非情な男……よ」   この隠力はこんな風にも使えてしまう。だから忌み嫌われ、流奈姉さんは……   軽く鼻息をついて頭からその事を消した。今はそんなことを考えている場合ではない。   俺は開け放たれた道に目を向け、最後の階段に足をのばした。  
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