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「その様子だと知ってるみたいだけど、私は朔良 姫花(さくら ひめか)。私を置いてアメリカに行っちゃったお母さんの言った通りに来たんだけど……つまりは現状把握ゼロ。意味不明でポカーンって状態なのよ。まずは少し私の質問に付き合ってくれない?」
姫花は見た目に似合わず話の通じそうな不良に聞いてみた。脱色した短髪がツンツンとしてて目つきはすこぶる悪い。服装も髪型も不良です!ってゆー自己主張が激しすぎ。
「あ?俺に聞くなよ。俺だって良くわかんねーんだから」
ガシガシと頭を掻くとイライラしたような口調で不良もとい薫は息をついた。ひざにゆるめたひじを乗せた仕草がさらに不良らしい。
「う゛」
役に立たないことが判明した薫から目を離すと、仕方なく偉そうな毒舌美少年に向き直る。どうやらレベル①の木の棒と布のつなぎ(おぷしょんダンボール)で魔王に挑戦しなければならないらしい。
うぅ(涙)……一面にして死にたくない。
「あの……あなたがママの言ってた知り合いのお方でっしゃろか?」
緊張のあまり語尾が変だけど気にしない。うん、私がんばった!!
優雅な座り姿はさながら王室の肖像画みたい。サラサラの髪が心なしか揺れた気がした。
優しく微笑むと大天使ミカエル様のような少年“要”は頷く。
「そうだよ朔良さん。西園寺グループって知ってるよね?ここはそこの御曹司(つまり僕)が飼ってるプリンセスのお家だよ」
ああ、出会い頭に降臨されてた気がする眩しい笑顔っっ
「ぷ……プリンセス?」
でも意味がわかんなかった。何言ってんのコノヒト?
「おいでプリンセス」
天使様が手を差し伸べるとすらりと綺麗な黒猫が彼の白い指に頬を預けた。
「猫!?猫の家なのここ!!!?」
「そ、父の気まぐれでね。なぜかプリンセスの為に建てた家に僕まで住むことになったんだよ。二匹のノミ付きでね」
「ふざけるな!!!誰がノミだ!んなことに俺まで巻き込むんじゃねぇ!!!!」
ドスの利いた声も今回ばかりは大賛成だ。金持ちのやることは良くわからない。こんな大きな家を猫のために建てちゃうなんて――馬鹿じゃない?私のママはそんな素っ頓狂な要パパの知り合いで、私はその被害者。じゃあ
「あなた達の関係は?兄弟?」
思わず漏らした声にその場の空気は止まる。
「誰がっ」
「はっ」
怒鳴る不良と鼻で笑う天使。息がぴったりだ。
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