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―病院の一室―
「ヒャハハハ♪」
とても正気とは言えない、目の焦点が合っていない武藤純也の姿があった。
純也は、ベッドの上に立ち、呆けた顔で、見えない何かを捕まえようとしたり、払いのけようとしていた。
……あの時。
純也が涼子を殺した時に、純也の傷口から涼子の体液が入り込み、純也の精神を蝕んでいってたのだ。
勿論、新薬など完成してなどいない。
あの日から、純也は悪夢を見続けていた。
うっすら笑みを浮かべながら、その様子をガラス越しに見ている女の子がいた。
その女の子の隣にいる女性が、女の子の目を手で隠す。
梶原奈々子である。
奈々子は、涼子が行方不明になり、研究所での一件の真相が知りたいが為に、お見舞いも兼ねて涼子の彼氏であった武藤純也のもとに足を運んでいた。
あの日から、5年の月日が流れた今も純也は回復の兆しが見られなかった。
「涼子ちゃん?
見ちゃダメよ!
ここに来る時は、必ずついてくるのは何でかな?」
その女の子は、奈々子の子供ではない。
研究所で起きた事件から1ヶ月くらいして、奈々子のもとに訪ねて来た女の子だった。
涼子と名乗り、純也がこの病院にいることを教えてくれたのだ。
話し方は幼く、涼子本人とは信じていなかったが、どうにも他人の気がしなくて、身よりのないこの女の子を養子に引き取ったのだ。
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