黒い箱

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あの日は、たまたま仕事も早く終わり、ジムに通う日でもなかったので、夕飯の買い出しも兼ねて、街中をブラブラと歩いていた。 「さぁーってと♪ たまには、美味しいモノでも食べて、ストレス発散しないとね♪」 もちろん、料理を作るのも好きだけど、美味しいモノを食べるのも好きなのだ。 何を作ろうかと考えながら、スーパーに向かおうとすした時。 ドン! 誰かとぶつかってしまい、転んでしまう。 私のバッグの中身は無事だったが、相手は40cm四方のダンボールの中身をぶちまけてしまった。 「すいません! 考え事をしていたもので……」 私は、急いで立ち上がり、中身を一緒に拾い始める。 ぶつかった相手の人は、男性なのは分かるが、帽子を深く被っているので顔はよく見えない。 服装からは、どこの業者かわからない、私服に近い、黒いシャツにジーパンという格好をしていた。 だが、慌てて拾い始めた私を遮るように、無言で拾い集めると、急いでどこかへ行ってしまった。 バラまいたモノは、数が少なかったのか、それが何だったのかは確認できなかった。 「何、あれ? ぶつかったのは、お互い様じゃないの! 謝りもしないでさっ! また、ストレス溜まっちゃうじゃないのよっ!」 男の態度に腹を立てていると、誰かに声をかけられた。
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