黒い箱

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「先~輩~♪ 何してるんですか? 捜しましたよぉ?」 会社の後輩だった。 名前は、梶原 奈々子(かじわらななこ)。 顔も幼く、身長が142cmしかないために、今だに小、中学生と間違われるほどだ。 見た目も、間違われる原因だと思うのだが、幼児体型でポッチャリしている。 今年19歳で、高校卒業してすぐに入社したみたいで、今だに水を弾きそうな肌をしている。 ……羨ましいな。 そして、5つも離れている私に、何故かなついている。 「あら、ナナちゃんの声がしたと思ったのに?」 私は、ワザとらしく周りを見渡す。 「先輩~! イジワルしないで下さいよぉ。」 奈々子は、何とか私に気づいて貰おうと飛び跳ねて、手をパタパタと振っている。 憂いやつめ。 「冗談よ♪ そーいう、ナナちゃんこそ、こんなとこで何してるの?」 奈々子は笑顔で、返事をする。 「私ですか? へっへー♪ 先輩を追いかけてきたんですよぉ。 先輩ったら、仕事終わりの時間になったとたん、即帰るんですもん。 声かける暇もなかったですよぉ。」 今日は、ちょっと奮発して、豪勢とはいかないまでも手の込んだ料理を作ろうと思っていたので、定時になってすぐにタイムカードを押して、会社を出てきたのだ。 「それで、どうしたの? 男ネタならパスよ?」 奈々子は、男ウケが良い。 私が彼氏とあまり会ってないことを知ってから、よう合コン等のネタを持ってくる。 私は、それを何度となく断ってきたのだ。 「違いますよぉ。 今日は、久しぶりに先輩の手料理が食べたくなったんです♪ あっ、もちろん材料費は負担します。」 奈々子は目を輝かせながら、答える。 動物に例えるなら、犬ね。 奈々子が失恋した時に、この子の家で愚痴を聞きながら、料理を作ったのがキッカケでした。 失恋の事が、どうでもよくなるくらい美味しかったみたい。 それ以来、ちょくちょく料理を作って、一緒に食べたりしているのだ。 今日は大作を作ろうと思っていたけど、別にいっかと思い、何が食べたいか聞いてみた。
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