黒い箱

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スーパーから、私達の家はバスで10分くらいのところにある。 大した待ち時間もなく、バスに乗れたので、すぐに家に着いた。 「おっ邪魔しま~す♪」 元気よく奈々子が、私の家にあがる。 私の家は、8階建てのマンションで505号室だ。 2LDKで一部屋、6畳半で割と住みやすい。 「私、着替えてくるから、少し待っててね。」 私は、奈々子をリビングにとおし、バッグを置くと、着替えるために奥の部屋に入っていった。 「は~い♪ わぁ! 先輩の家って、いつも片付いててキレイですよねぇ♪」 私は、白のトレーナーに白のスエットというラフな格好に着替えると、奈々子の待つリビングに戻った。 「お待たせ♪ お腹もすいたし、早速作りましょう。」 私は、エプロンをつけると、台所に向かった。 「あっ、私も手伝います。」 大人しく座っていた奈々子が立ち上がって、私の後をついてきた。 台所につくと、私は何を手伝って貰おうか悩んだ。 実は、この奈々子。 とんでもなく不器用な子なのだ。 前にも、手伝って貰った事があるのだが、野菜を切るにしても、すぐ怪我をしてしまうし、お皿を並べるだけでも、すでに2枚のお皿を割ってしまっていた。 「…う~ん それじゃあ、野菜を軽く洗ってくれるかな?」 洗うだけなら問題ないだろうと思い、袋からタマネギを出して、手渡した。 「わっかりましたぁ~♪ 一生懸命、洗いますね!」 タマネギを受け取った奈々子の顔は、真剣そのものだった。 「……落ち着いてね?」 私は、少し不安だったが、パスタを湯がく事にした。 そして、他の野菜を切ったりしていると、奈々子が泣きそうな声を出す。 「先輩~ タマネギの皮をむいたんですけど……」 奈々子の手元には、直径3cmほどの物体が。 …それ、むき過ぎでしょ? 「ナナちゃん? ここはいいから、リビングで待ってていいわよ?」 私は、新しいタマネギを取り出した。 「すいませ~ん。 でも、でもぉ~、何か手伝わせて下さいよぉ! 何かしてないと、落ち着かないですよぉ~。」 奈々子は、怒られた子犬のように、シュンとしている。 この子に悪気はないからなぁ… 「それじゃあ、お風呂でも沸かしてて貰えるかな?」 「は~い♪ いってまいりまぁ~す。」 奈々子は、自分にも出来る事を言われたのか、嬉しそうに浴室に消えて行った。 ……やれやれ。 私は、気を取り直すと、料理を再開した。
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