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「三ッ林 星歌、このままだと留年だぞ?」
2年の冬休みに担任である伊集院は星歌との二者面談でそう通告した。
ぺらぺらの紙に印刷された文章を速読した星歌はあっさりそれを破り捨てる。
「留年で結構。退学でも結構。他にお話は?」
強気の態度を示す星歌に伊集院は珍しく溜め息を漏らして額を掻いた。
無愛想と言われる割りには思考が顔に滲み出ている。
「あのな、学校に来ないなら悪戯するぞ? 俺、女の子に悪戯とか大好きなんだ」
「いきなりなんだよっ?! つーか、真面目な顔していかがわしい言い事言ってんなっ! 生き生きすんなっ! キャラはどうした、キャラっ!!」
「そんな物は知らん。それよりも何故、学校に来ないんだ。俺は淋しいぞ? 俺が嫌いとか言う理由なら泣くぞ?」
「顔と台詞が噛み合ってねーよっ! 人の話を聞けよ、馬鹿野郎っ! 理由はバイトだ、バイトっ! 生徒の家事情くらい知ってるだろうっ?!」
「どうすれば、お前は学校に来てくれるのだ? 退学なんてしたら会えなくなるんだぞ? それは……悲しいな」
「あたしの台詞はシカトかよっ! はっ、あたしはセンセーに会えなくても構わねーっつーの。まぁ、そうだな……あんたが養ってくれたらいくらでも登校してやるよ。住む家にも困ってるしな」
「むっ、それは迂闊だった。校長、校長、彼女と結婚しても良いか? 喜んで俺が彼女を養うぞ! それで問題は全て解決するぞ」
「別に良いよー。ただし、ヘマはしないでね。妊娠とかはさせないでね。問題はイヤ。教育委員会とかコワイから」
「分かってるぞ。やったな、三ッ林。脱貧乏、脱不登校。俺、若い嫁GET」
「……はぁー?! 待て、待て、待て、待て。待てよっ、エセ教師っ!」
「残念ながら楽しいから待たないぞ。さぁ、婚姻をしに市役所へ行こう! 夢の新婚ライフへまっしぐらだぞ」
制服姿のまま伊集院に連行された星歌は訳も分からぬまま17歳と言う有り得ない年齢で教師とお付き合いならぬ結婚。
この日を境に二人の人生は大きく変わって行く。
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