3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
その少女には最近、真剣な悩み事があった。
それは一般的な女子高生……
例えば彼女のクラスメイトが普段気にしているような、そんな単純なものなどではない。
彼女にとって、ダイエットや片想いといった単語は無縁な存在なのだ。
なぜなら彼女、日向葵(ヒムカイアオイ)は、文武両道、才色兼備。
どこをとっても申し分ない存在。
つまりは完全なる主人公性質なのである。
(嫌だなぁ……)
はぁ、と小さくため息をつく。
それは冬の冷たい空気にふれて、白く残った。
毎朝彼女が直面する悩みの原因。
それは……
「……いたっ」
通学路の途中、横断歩道の向こう側で、一人の中年の男が無表情でじっとこちらを見ていた。
その男はいつもの黒い服を着て、いつものように、そこにいた。
最初のコメントを投稿しよう!