MOTHER

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……ってちょっと待て。さっきあの人カナタって呼ばれてなかったっけ? 「おや? その様子じゃ気づいたのか? つまらんなぁカナタ」 「本当に悪趣味」 はぁ、と心底呆れたようにため息をつくカナタさん。そして更にダバラが嫌いになった俺。 「では改めて自己紹介などはしないっ!」 「……」 この人はノリと勢いと思いつきで生きてるんだろうか。あまりにも周りを突き放してカッ飛んでるもんだから、ついていけねー。 「来たばっかでチマチマ説明されんのはイヤだろう? 俺もイヤだっ! だから早速一つ仕事をやろうっ!」 返答の隙もなく話し終えた暴走王は、いきなりポイッと紙の巻物を投げてきた。俺は慌てて受け取る。一体なにかなと期待しつつそれを開こうとして、 「そいつは宝の地図だっ!」 「……」 先に言われた。 いきなり何の楽しみもなくなったが、まあ開いていく俺。 そこには見知らぬ地形と赤い点、青い点がある。 これが普通の地図と違いさすがバーチャル! なのは、その赤い点と青い点が点滅しており、赤い点に至っては移動してるということ。 「青が宝、赤がお前のいる位置だっ! まあ来たばかりじゃどこがどこだかわからんだろうが、心配はするなっ! 迷うことはないっ! カナタっ!」 なにやら早口でまくしあげたかと思えば、隣でカナタさんがコクリと頷き、いきなり何かを投げつけてきた。 「え? え?」 戸惑いつつもそれを受け取る俺。見てみれば何の特徴もない黒い玉だ。大きさは拳大くらい。 「とりあえずぶっ倒せっ! それで解決だっ! ぶっちゃけ今は戦争中だっなんとか生き残れっ!」 「え? なんのこ……戦争?」 戦争……戦争?! 「いや、ちょっとま」 「転送」 カナタさんのその一言を最後に、目の前から王宮の景色が消える。 まるでテレビの電源を切ったかのようにあっさり。 またやってきた時のような感覚をほんの数秒間だけ感じ、気がつけば目の前はだだっ広い草原だった。 「……選ぶ国、間違えたかな」 みんながいるエリュシオンの方がいい気がする。王様とか優しそうな気がする。ふふふ、とか微笑んでそう。 「……はあ」
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