Prologue-

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□■□■□ 「なあイオリ、これ知ってるか?」 とある中学校のとある教室。窓側最後尾に座っている俺に、友達のユウキは一枚のビラを差し出した。 「……見えない」 「もうちょっとボケないか」 ゼロ距離にあったチラシが机の上にパシンと置かれる。ファンタジーな草原に城、その中央に不思議な剣を持った男がいる。 「ああ、UPSTARTか。ニュースでは若者を腐らせる病原菌、とか言ってたな」 「そりゃあ現実を見ないバカだけの話だ。ま、上りつめりゃ働かずに暮らせるのは本当だけどな」 「で、これが?」 「やらないか?」 すげー真摯な顔で呟かれた。突っ込むのは、まあ止めておいて。 「興味はあるけど」 その人気のわりにはずいぶんと悪い噂を聞く。主にニート生産機って方向で。なもんだから、今まで興味はあっても両親が許可してくれなかった。 「どうせ親が、っていうんだろ? 大丈夫さ、俺が説得して見せるから」 ぐっと立てられる親指。 「いや近いし」 「もうちょっとボケないか」 ボケない。 「でも説得して、か……もしそれができるならやりたいな。 やっぱり話題のゲームだし、かなり興味はあるんだ」 「任せろ。放課後を楽しみにしているがいい」 ユウキの口車は天下一品なもんだから、自然と期待してしまう。 「……あ」 ユウキは、ふと何かを思い出すように漏らした。 「言い忘れてた。 ゲームの中身を知らないお前には間違いなくわからないと思うんだが……このゲーム、攻略するには現実でも努力が必要だったりするんだ」 「ん? まあゲームだし。予備知識を詰め込むのは常道だろ?」 「そういうんじゃなくてな……コビを売っといたほうがいいんだ」 「……は?」 コビ……媚び? 「まあイオリには無理だな。そこも俺に任せとけ」 言って、消えるユウキ。そのまま残像だけでクラスメート数人のスカートをめくり、教室を出て行った。 「白白ピンクベージュ白……ぬう……いい仕事しやがるぜ」 無論、教室の中は大混乱となっている。女子は怒り男子は微笑む、てな感じ。狂気の宴は、いやしかし眼福だった。 「イ、イオリくん……」 騒ぎが収まりかけてきた頃。ててて、と細やかに駆けてきた女子は、小さくなりながら声をかけてきた。
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