Prologue-

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「お、ツツジさん」 声をかけたらなおのこと身を縮めたツツジさん。心なしか顔が赤い。 「あの……見たんだよね?」 「しろ?」 「~~~~~」 おお、一気に顔が真っ赤になった。面白いな。まるでコタツの中の……。 「あの……う……パンツじゃなくてっ……!」 言いながらゆっくりとしゃがみこんでいくツツジさん。面白い。花がしぼんでいくようだ。 完璧にしゃがみこんだツツジさんは、顔を半分隠しながら上目使いでこちらを見ている。 「あの……ゲームの、チラシ……」 「ああ、そっちか。見たよ」 その答えが嬉しかったのか、あるいは求めていたものだったのか、途端に半分隠れた顔がぱあっと笑う。 「あ。もしかしてツツジさんもやってるの? UPSTART」 「うん……で、その……イオリくんは、もうどこの国に入るか決めたのかな、って」 ……国? 「なにそれ?」 「あ、そっか。まだ知らないんだね。 ゲームの中には三つの国があるの。プレイヤーは初めにどれかの国に入るんだよ」 「へぇ? ……ちなみにさ、ツツジさんはどの国にいるの?」 ふえっ、とか言いながらビクついた後、小さな声で答えが返ってくる。 「私はエリュシオンっていう国。まだ一度も王様の交代が起きてなくて、平和なんだよ」 「へえ……他のは?」 「あと二つ、カナンとアルカディアがあるよ。 カナンは商人が集まっていて、アルカディアは戦いが好きな人が集まってる国」 なるほど。じゃあ参加者は好みに合わせて国を選べるわけだ。俺としては戦いを楽しみたいし、やっぱりアルカディアだろうな。 「あの……それで、イオリくんもエリュシオンにこないかな?」 「え?」 「その、クラスのみんなも大体ここだし……わからないことがあれば、その……サポート、してあげられるし……」 「ああ、そっか。そういうのもあるんだな」 さっきユウキが言ってた現実で頑張ることってのは、これに関係してるんだろう。リアルで国が同じ人と仲良くなって、ゲームの中で協力し合う、みたいな感じか。 「それで、その……どうかな?」 「んー…しばらく考えてみるよ」 魅力的だが、煮え切らない部分がある。 「あ、うん。ゆっくり考えて」 それじゃあ、と手を振って席に戻っていくツツジさん。 ふむ。クラスのみんなも大体いる、って言ってたしな。それはすっげー楽しそうではあるんだけど。
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