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なんて悩んでいるとユウキが戻ってきた。いつの間にか現れたユウキに、先ほどので警戒したらしい女子たちは一カ所に固まって防御陣を組んだ。
「待たせたな。成功したぜイオリ!!」
いよいよユウキが教室に踏み込む。女子たちの目が真剣身を帯び、男子たちの目に期待が宿る。
無論。俺もだった。
「「消えたっ!?」」
男子の驚きを合図に女子が固まる。ばばばばばっと人らしからぬスピードで教室を駆け回るユウキ。通った後には布が舞い踊った。
「キャアアアアアー!」
続く女子たちの悲鳴。男子たちは一気に顔を赤らめた。俺も思わず目をつむってしまう。これは……やりすぎだぜユウキ。
「なんでそこまで……見てて可哀相だぜ?」
俺というゴールにたどり着いたユウキに、彼の後ろを指さしながら注意を促す。見れば、女子たちは更に固まって恥ずかしそうに身をすくめている。
「いや、こういうのは平等に行くべきだろう」
なんて言って、剥ぎ取った『男子』のズボンを投げ捨てる。
「「きゃあ!」」
持ち主の男子と女子たちが同時に悲鳴を上げた。っていうか見てたのかよ女子。
「で、何してきたんだ?」
「ああ。実は三年にエリュシオンの王様がいてね」
「へー…王様?!」
いや王様って……確かUPSTARTの最高位だよな。しかも国民が集めた宝が、そのまま利益として現実で換金されるっていう。
少ない知識の中で唯一知っていた情報だった。え……つか高校生で既に金持ち?
「割と話の通じる人でな。色々と宝の情報を回してもらえるようになった。これで立ち回りがかなり楽になるぜ?」
小さくはしゃいでくれてるが、こちらの気分はかなり複雑だ。目指すべき目標に頼るってのは、どうにも負けてる気がして悔しい。
けどユウキの言うとおり、やっぱり頼った方が楽になることは確かなんだろうなあ。
「んー…」
「さてさて。次の授業が終われば、後はイオリの親を説得するだけだな。はっはっ、興奮してきたぜ」
さっと席に戻るユウキ。周りでは男子たちが自分のズボンを探して地面を這いずり回っていた。
「……ふむ」
エリュシオンなら身内がたくさんいて、ツツジさんは協力を約束してくれたし、王様まで協力してくれるらしいし。
楽、だけど。
なんかなあ。
「ぬー…」
頼りっきりのぬるま湯どっぷり、っていうのは、性じゃない。
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