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【新規の方でございますね】
「え……ああ、はい」
突然どこからか聞こえてきた女性の声。少し驚いたけど、すぐにああ、と気がつく。
たぶんこれが初期設定の確認だろう。受付でこういうものがあるとは聞いてた。
【ようこそ、UPSTARTへ】
女性は感情のない機械的な声で話を続ける。
【それでは、これからプレイヤーの初期設定を開始いたします】
ブゥン、という音と共に、俺の目の前に入力用インターフェースが現れる。
パソコンのキーボードを光で作ったような感じ。こういうの、よくアニメであったなあ。
【まずはプレイヤーの名前をご入力ください。左下のENTERボタンで確定します】
名前は……まあ、このままでいいか。変なものにしたらみんなに笑われそうだし。
俺はそのまま イオリ と入力し、ENTERボタンを押す。
【プレイヤー名はイオリ でよろしいですか】
えっと……キーボードは消えてしまったし、これは音声入力でいいのかな。
「よろしいです」
【……設定しました。
次いで、初期武装の選択を行います。こちらは映像に触れることで決定します】
先ほどと同じくブゥンと鳴り、目の前に三つの立体映像が現れた。
それぞれがくるくると回っていて、剣、銃、?を模して……
「ハテナってなんだ。ただの記号じゃんか」
【それぞれが剣、銃、そしてそれ以外の特殊な形状の武器となります。
?は剣、銃に比べて扱いにクセはありますが、ゲームの中では武器を購入出来ますので、扱えなくとも問題はありません。
どんな形状になるかはランダムで決定されます】
「へえ」
くるくると回るハテナを見つめながら、俺は気の抜けた声を出す。
なるほど。じゃあこれを選べば、運が悪ければとんでもない物に当たるかもしれないと。
じゃあ……運が良かったら?
「……うん、こっちの方が面白そうだし」
迷わず『?』に触れる。
指はそのまま映像をすり抜け、瞬間、? がその場でぐにゃりと形を変えた。
暗闇の中で七色に発光し、変形し、やがて一つの形に落ち着いていく。
「なにこれ」
現れたのは刃渡り30センチほどの、なんとも言えないナイフだった。
いや、確かに装飾は凝っている。
柄には植物をモチーフにしたシルバーの模様が刻まれているし、青い刀身は水晶のように澄んでいて、また読めないけど文字らしきものが入っている。
……でもこれ、どちらかといえば剣類だよな?
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