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「貴様は何度いわれたらわかるんだ!」
頭がうっすらハゲかけている中年くらいの男が一人の少年に向けてだれもが不快に思うようなどなり声をあげる。
少年はそのどなり声の対象であるにもかかわらずそれに微塵の興味も反応もみせない。
ただ時が過ぎるのをまっている。そんな感じの態度だ。
「聞いておるのか!」
「はあ、まぁなんとか」
そんな態度が中年男の怒りのボルテージをあげているわけで、先程から1時間ほどこの調子である。
中年男の顔は真っ赤になっており、両手がわなわな震えていて、放っておけばほとぼりが冷めるのはまだあと1時間はかかりそうだ。
「だいたい貴様はだな――」
突然きこえるドアをノックする音。
「なんだ、入れ」
説教を中断されて気を悪くしたのか中年男の声は多少の不快感をともなっていた。
その呼びかけに入ってきたのは説教されている少年と同じくらいのこれまた少年。
その少年は一度敬礼をし、口をひらく。
「失礼します。……おとりこみ中でしたか」
「かまわん。用件を話せ」
「はっ。ミューゲン中将がゲハルト大佐をお呼びになっています」
「わかった。すぐ行く。下がっていいぞ」
「はっ。失礼します」
入ってきた男は再び敬礼をすると部屋を後にした。
「ミューゲン中将ですか、これは早く行かないといけませんね大佐ぁ」
「貴様は黙ってろ。……ちっ、不本意だが今回はここまでにしてやる。召喚師だからってあまり問題をおこしてくれるな。わかったな」
「へいへーい」
ゲハルト大佐はもう一度舌打ちをして部屋を出ていった。
その間少年はひらひらと手を振って中年男を見送る。
その後少年も部屋を後にした。
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