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「ジャン、代金はつけといてくれ。急用ができた!」
クロスとロイの二人はジャンの返事を待つことなく店を飛び出す。
辺りを見回してもあの女の姿は見えなかった。
だが、女が店を出た時間とクロス達が出た時間にそこまで差はなく、まだ近くにいることはたしかであろう。
二人は女が店から出ていくときに右に曲がったのを見ていたので、その方向へと走りだした。
「くそっ、せっかく手掛かりを見つけたかもしれないのに!」
「あせったらだめだよ。まだ近くにいるはずなんだ。全力で走れば追い付くさ」
もちろんロイのいった言葉にはなんの根拠もない。もしかしたらもう車でも捕まえて遠くにいってしまったかもしれない。
ただ、ロイは自分の願望も含めてこの言葉をクロスにいったのだ。
二人は全速力で路地を2度3度まがり、大通りへとでる。
「―――いた!」
クロスは確認できるぎりぎり範囲の中に自分の頭にリボルバーを突き付けた女を見た。
ロイも確認できたようだ。
その女はいま車に乗り込もうというところで、このままでは普通に走っただけではとても追い付けそうもない。
「クロス、召喚するから出来るだけ見失わないように追って!」
「わかった」
クロスはさらに速さをあげて女を追いかける。
ロイは立ち止まり適当な場所にしゃがみ込むと自分が精一杯手を伸ばして描ける円を描き、その中に上下反転した三角形を一つずつと不思議な記号の組み合わせのような文字をかなりの早さで敷き詰めていった。
使用した時間は約30秒。術式の簡略化と最高限度の召喚陣小型化、他にもいろいろあるがこの二つはかなりの高等技術だったりする。
ようは陣を本来より簡単にして小さいものにしたというものである。
出来上がったのは魔法陣。ではなく、召喚するための陣、『召喚陣』と呼ばれるものであった。
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