14097人が本棚に入れています
本棚に追加
【伊吹夏奈子の視点】
私とカズマは狭い生徒会室で息を潜める。そして、向かい合うように壁に耳を押し付け、廊下の様子を探る。
時折、逃げる生徒のシューズ音が聞こえるだけで、馬蹄の音はしない。
私は壁から耳を離す。
「もしかして、もう校舎内にはいないのでは?」
私の言葉に、カズマは壁に耳を押し付けたまま、「黙ってろ」と返した。
「・・・・・・」
望月さんなら私の言葉をそれなりに尊重してくれる。だが、この男は聞こうともしない。
やはり、好きにはなれない。嫌いなタイプだ。
(大嫌い・・・)
私の視線に気付いたカズマが、手にした薙刀を私から隠すように自分の背中へ回す。
「危ねえ・・・親指を刃に当てられたら、俺もあいつの二の舞だぜ」
「失礼ですね!この程度で沈めようとは思いません!まだ、『その時』では・・・」
「皮肉のつもりだったが・・・程度によっては、『その時』が俺にも訪れるのか?おい?」
カズマは首筋にまで汗を浮かべ、それを茶色いコートの袖で拭う。
「・・・ん?」
カズマが腕の動きを止め、窓の方を見た。
「どうしました?」
「エンジン音・・・遠くだが・・・」
最初のコメントを投稿しよう!