第26話 泥と血と涙㊥

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【伊吹夏奈子の視点】 私とカズマは狭い生徒会室で息を潜める。そして、向かい合うように壁に耳を押し付け、廊下の様子を探る。 時折、逃げる生徒のシューズ音が聞こえるだけで、馬蹄の音はしない。  私は壁から耳を離す。 「もしかして、もう校舎内にはいないのでは?」 私の言葉に、カズマは壁に耳を押し付けたまま、「黙ってろ」と返した。 「・・・・・・」 望月さんなら私の言葉をそれなりに尊重してくれる。だが、この男は聞こうともしない。 やはり、好きにはなれない。嫌いなタイプだ。 (大嫌い・・・) 私の視線に気付いたカズマが、手にした薙刀を私から隠すように自分の背中へ回す。  「危ねえ・・・親指を刃に当てられたら、俺もあいつの二の舞だぜ」 「失礼ですね!この程度で沈めようとは思いません!まだ、『その時』では・・・」 「皮肉のつもりだったが・・・程度によっては、『その時』が俺にも訪れるのか?おい?」 カズマは首筋にまで汗を浮かべ、それを茶色いコートの袖で拭う。 「・・・ん?」 カズマが腕の動きを止め、窓の方を見た。 「どうしました?」 「エンジン音・・・遠くだが・・・」
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