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部屋の暗さと俺の暗さ、その闇に染められるように、夏奈子の表情も暗くなる。
「すみません・・・昨日、私まで望月さんのことを変態だなんて言ってしまって。あまりに驚いたものですから・・・でも、本当はそんなこと思ってませんよ」
「・・・本当か?その割には、指まで突き付けて俺を変態呼ばわりしていたが?」
「あ、あれは・・・その」
「あれが、一番効いた」
こんなことを言えば、夏奈子が落ち込むことは百も承知だ。
だが、一晩かけて自分の中の変態と向き合った俺に、人の心を気遣う余裕などない。誰とて、自分の中の負の面と向き合うのは辛いことだ。その過酷な作業を延々と続けた俺に、正常な判断、良心など残っているわけがない。
「わ・・・私が・・・望月さんを一番傷つけたと?」
「ああ、そうだ」
「そのせいで、心がすさんでしまったのですか?」
「当然だ」
「そ、そんな・・・」
夏奈子は崩れ落ちるようにして、トサッと畳に座り込んだ。それから腕を顔の下にして、身体を畳へ伏せる。
シクシク
光の差し込まぬ部屋に、低い笑い声と悔恨のすすり泣きが満ちる。
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