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「って、暗っ!?」
次に部屋へ入って来たのは、沙恵であった。
「何よ、この暗黒雰囲気!?」
「よお、沙恵」
手を上げて挨拶した俺を、沙恵はキッと睨んだ。
「あんた!暗く沈むなら一人で沈みなさいよ!夏奈子まで引きずり込むなんて!」
沙恵の瞳に義憤の炎が燃える。
「くっくっく」
「何がおかしいのよ!」
「沈んだのは・・・俺じゃない。沙恵の方だろ?」
「・・・え?」
瞳の炎が揺らぎ、わずかに弱くなる。
「な、なんのことよ?」
「昨日、湯に沈んでたよな?」
「な、なんでそれを!?」
さらに瞳の炎は弱くなる。
「カ、カナヅチじゃ悪いっていうの!?」
「いや、そんなことは言っていない。それより、湯の底はどうだった」
「え?そ、底・・・」
瞳の炎は完全に消え、かわりに怯えが宿る。
「なあ、水の底から見た光景は?教えてくれよ」
「お、思い出したくないわ」
「底から見た水面は?陽にキラキラと輝いていたか?」
「き、聞かないで・・・」
「さぞ、苦しかったろうな」
「うう・・・」
沙恵は屈み、耳をふさぐ。
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