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俺はその耳に口を近づけ、ささやく。
「ブクブク」
「いや・・・思い出させないで」
「ブクブク」
「苦しい・・・うう」
沙恵は身体を丸め、身体を震わせる。恐怖を追体験しているのだ。
「くっくっく」
低い笑い声とすすり泣き、そこに沙恵のうめき声が混ざり、部屋の雰囲気はますます俺好みの暗さとなる。
「夏奈子、沙恵、遅いわよ?」
いつまで経っても帰ってこない二人を心配してか、美奈が部屋に入って来た。
新たな獲物、犠牲者の到着だ。
「よお、美奈」
俺は何食わぬ顔で片手を上げ、美奈に挨拶する。
しかし、美奈は俺を無視し、泣き伏せる夏奈子と、パクパクと空気を求める沙恵に目を走らせる。
そして、一瞬で状況を理解したのか、両手で自分の耳をふさいだ。
それから、美奈はサッカーのシュート練習をするかのように、足の素振りを始めた。
ブンブンブン
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