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再び負ってしまった瀕死の重傷を温泉で治した俺は、たとえ変態と罵られようが、生きていることは素晴らしいと気付く。俺は生きるために朝食を食べ、部屋へ戻ってきた。
部屋の中は相変わらず暗く、ジメジメとしていた。
(まあ、こんな場所にいれば、気も病むよな)
俺はスリッパを脱いで座敷に上がる。そして、カーテンに向かおうしたところで、閉めたばかりのドアからトントンとノックの音がした。
「ん?誰だ?」
「私です」
夏奈子の声だ。今さっき食堂で別れたばかりである。俺を追ってきたらしい。
「入ってもいいですか?」
「いいぞ」
「失礼します」
夏奈子はわずかにドアを開け、その隙間から身体を滑り込ませる。そして、廊下に顔を出してキョロキョロと左右を見回し、それからドアを閉めた。
「なんだ?誰かに見られたくないのか」
「はい、望月さんに秘密のお願いがあって来ました」
「お願い?」
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