14097人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は死神に向き直ろうとし、足の甲の激痛に顔を歪める。同時にそれは断念の表情となる。
死神の速度には追い付けない。死神はすでに大鎌を振り上げている
今から死神に正面を向け、刀で受けることは不可能だ。
俺は防ぐことを諦め、身体を倒して横に跳ぶ。
二の腕に痛みが走り、浴衣が切れて血飛沫が舞った。
己の血に濡れた大鎌を仰ぎ見ながら、俺は腐泥門の上を転がる。
ただし、これはわずかな延命にしかならない。転がる俺の脚に長い裾が巻き付き、姫の踏む場所どころか脚の自由がなくなる。
万事休す
死神が一歩距離をつめるだけで、大鎌は俺にとどき、俺は死ぬだろう。
真紀は俺から距離をとり、複雑な表情で見下ろしている。彼女は裾踏姫、彼女に救けを求めることは出来ない。真紀に望めるのは裾踏みだけだ。
(章介は!?)
真紀から章介へ視線を移すが、章介は動こうと、今まさに泥を跳ね上げたところであった。
(間に合わない!)
最初のコメントを投稿しよう!