第26話 泥と血と涙㊥

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俺が半ば覚悟を決めた時、死神が動く。 ただし、それは俺への一歩ではなく、その場での上体のひねりであった。  上体の回転に合わせ、大鎌が死神の後ろへ180度回転する。そして、刃は裾を踏む足に突き付けられた。 その足は黒衣の姫のものではない 今、緑の裾の上には三本の足が乗っている。二本は喪服の姫の足、残る一本は白い太股もあらわに床から伸び、膝を曲げている足。 はだけた朱色の袴 海瀬茜の脚だ。  「茜!?」 章介はたたらを踏んで急停止、慌てて後ろを振り返り、そして、自分の後ろに茜がいないことを確認すると、すぐにまた前を向いた。 「いつの間に!?」 知らずに冥府刀を振っていれば、またもや沈んでいるところだ。 茜の脚は章介にかけるべき裾踏留めの呪術を死神にかけ、呪縛している。 死神は動けない。 そして、床の血溜まりから茜が首を出した。  艶めかしい太股と白い首筋だけを出した姿は、まるで血のバスタブに浸かる美女のようだ。 そして、茜はその姿に相応しい笑みを口元に浮かべた。 「斬らないの?私の脚?」
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