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「どこら辺で停まった?」
カズマが私に問う。
「もう一つの棟の方、一年校舎だと思います」
「どうやって行く?」
「一階へ下りて、渡り廊下を通ります」
「なら、行こう」
カズマは長いコートの裾を引きずり、出口へ向かう。
「良いのですか?私で」
私の問いに、扉に手をかけたカズマが振り返る。
「裾踏みによる戦闘はリスクが付き物だ。多少リスクが大きくなったからって、振るのを止めるようなら、最初から冥府の武器なんて持たねえよ」
カズマは不敵に笑う。
「この期に及んでごちゃごちゃ考えても仕方がねえ。裾の心配なんかしてられるか。鬼が現れたら戦う。そんで沈んだら諦めて沈む。それだけだ。とっとと行くぜ」
だが、カズマは扉に手をかけたまま、動かそうとはしなかった。
「どうしました?」
「・・・蹄の音だ・・・近づいている」
私の耳も、廊下をこちらへ歩いて来る馬蹄の音を聞き取る。
「・・・どうしますか?」
「やり過ごす・・・だが、油断はするな」
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