14097人が本棚に入れています
本棚に追加
馬上の主はその身にまとった艶やかな着物に負けぬ派手な笑い声を上げ、離れた場所で馬首を返す。
そして、頭から生えた蛇の尾を馬の胴に幾重にも巻き付け、上半身だけを馬上に吊る下げた美女は、槍をこちらへ突き付けた。
「大振りよな!豪快な男は好きじゃが、それでは我に当たらぬぞ!」
「こっちの姫さんとは初めてだからな。分かりやすく振ってやらねえとならねえんだ」
それを聞き、鬼が嘲るように笑う
「腐泥門に沈むを恐れ、手を変えるか?豪快は撤回じゃな。なんと小さき男よ!」
「ゴチャゴチャうるせえ。大振りで分かりやすく、テメエを倒してやる」
「よう言うたわ!」
馬がいななき、前脚の蹄で二回ほど床を掻く。
カズマは敵を見据えたまま、薙刀の柄で私の足元をコンコンと叩いた。
「ベタ踏みで構わねえから頭を下げていろ。危ねえからな」
悔しいが、どことなく望月さんより頼もしい。
私の目には、望月さんの背中は守らねばならない脆弱なものとして映が、カズマの背中は、私を守ってくれる防壁のように映る。
(・・・だけど)
最初のコメントを投稿しよう!