第26話 泥と血と涙㊥

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「長引かせねえ」 カズマの身体が少し横に傾き、裾の陰からわずかな泥の音がする。 動くと判断した私は裾から足を退け、それと同時にカズマは一歩だけ移動し、廊下の真中に陣取る。 馬の進路を塞ぎ、真正面から戦う気だ。 「その心意気やよしじゃ!」 鬼は胴廻りを回転しながら満足そうに笑う。 私は再び真紀さんの真似をし、姿勢を低くして裾を踏む。その私に「慣れねえことはするな」とカズマが言った。 「いつもの踏み方にしろ。後ろに薙刀は回さねえ」 「はい」 命令口調は気に入らないが、今はそんなことを気にしている場合ではない。 馬は速度をおとし、体躯を横に向ける。カズマの前には蛇の巻き付く胴腹、回転を続ける鬼は馬の背を乗り越え、下る勢いをもって上から槍を突き下ろす。 (なっ!!?) 舌の根も乾かぬうちに、カズマの薙刀を持つ右手が裏拳となって私の顔面に迫る。  反射的に仰け反り、裾から後退した私の前で、カズマは右手に右足を追わせ、身体を真横にした。 突き下ろされた槍がカズマの鼻先をかすめ、カズマの胸をかすめる
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