第26話 泥と血と涙㊥

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(この!!!) 少しでも退くのが遅ければ、私はカズマに顔を粉砕されていた。 今のところ、美奈さんに勝るものといえば、望月さんへの想いと、この顔しかないというのに。 (嘘つき!) (何が薙刀は後ろに回さないですって!) もう踏んでやるものか、とも思う だが、この場合、カズマの判断は正しい。 鬼は回転によって槍のスピードと威力を上げた。薙刀で防げば、押し負けぬよう防御に全力を投じねばならず、次の攻撃につなげることが難しくなる。逆に、かわすことが出来れば、鬼に大きな隙ができ、攻撃のチャンスとなる。 そして、カズマは見事にかわし、右足を元の位置へ戻す。 (もう二度と信用しない!) そう心に決めつつ、私は素早く裾を踏む。 槍をかわされた鬼は、そのまま横腹を下り、馬の腹下へ入ろうとする。  それを追い、薙刀が閃光となる。 刃は蛇の髪を数本断ち切り、黒い血が飛ぶ。だが、残りの蛇によって鬼の回転は止まらない。 鬼は腹下を通り反対側の横腹へ消える。 再び馬上に現れるのを待たず、カズマは馬の胴を横に薙ぐ。
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