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俺は恐る恐る振り返るが、やはり夏奈子の目に異常はない。
あの光は錯覚だったのかもしれない。だが、夏奈子が何かを企んでいるのは確かだ。
「夏奈子・・・いったい、何を企んでいる?」
この問いに、夏奈子の切れ長の目がスッと細くなった。
「何のことですか?私はただ、この近くに戦勝祈願で有名な神社があると聞き、望月さんの武運長久を願い、詣でたいと思っただけです。皆に秘密にと言ったのは、ただ、望月さんと静かに神社を歩きたかっただけです。私が私利私欲のために指輪を悪用しようとしている、望月さんはそのように思ったのですか?だとしたら、侮辱です。たとえ望月さんといえども許せません」
「そ、そうか・・・すまない」
俺は反省し、夏奈子に頭を下げる
「夏奈子、わかった。二人でその神社へ行こう」
俺がそう言うと、夏奈子は険しい表情を崩し、ニタリと・・・いや、ニコリと笑った。
「はい、では、ロビーで待っています。指輪を忘れずに持ってきてくださいね」
夏奈子はそう言うと、ふわふわと軽い足取りで部屋を出ていった。
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