業火の逃亡

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少女の作った隙間のおかげで、脱出は容易だった。約束通り、後ろを振り向くことなく街の出口まで一気に走り抜ける。 「……あっ……?」 その瞬間、周り一帯の環境が180度変化した。 炎熱で熱されてのどを焼いた呼気は、爽やかな秋の風に。地獄絵図のようだった風景も緑が溢れた自然たっぷりの大地に変わり、ようやく走り詰めで乱れた息を整えられた。 それこそ、彼らの街の内側だけが平和から切り離されていた───そんな印象を与える。 ……いや、実際のところ、確かにそうなのだ。追っ手がないか振り返ったとき、少年は初めて気づいた。燃えている、襲われている、崩落の一路を辿る、そんな光景が街を囲う塀の内側だけで起こっていると。 (だから、まず町の外にって……) とりあえず体の疲れと精神の疲れの両挟みで思考力が落ちた頭をフル回転させ、状況を確認することにした。
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