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「…………」
少年は今、立ち止まったところのすぐ近くに生えていた大木の根元で三角座りをして待っていた。町からまっすぐのところにあり、なおかつこのあたりで一番大きい木だ。周りにこれといって視界を遮る物もなく、少女が彼を見つけるには最適の目印となるだろう。
ただし、既に追っ手が来ていたら確実に見つかるであろうという考えを起こすほど、少年の思考は正常に働いていなかった。幸い、何も追ってくる様子はないようだが。
「…………まだ……?」
少女の無事を祈りつつ、町を見つめて待ち続ける。
その時、彼は見た。
「……ぁ?……あ……ッ!?」
あまりの驚愕に目がまん丸に見開かれる。
今いるこの場所にまで響いてくる地鳴りと共に、町すべてを飲み込むとも見える凄まじい光───つまりは、何か大爆発が起こったのだろう───が起こり、町を外壁の内側から一気に打ち砕いていった。
塀の間に作られた町の出入り口、今しがた少年が走り抜けてきた道、そこにある門はその衝撃で崩落し始め、それが次々と伝播するように周りの塀を巻き込み、まるでドミノ倒しを見ているかのように崩れ落ちていった。
そしてその直後、町の中心部の辺りから町を襲った“それ”の何百何千にも見えるほどの数の群れが、物凄いスピードで文字通り飛び去っていった。
「……行かなきゃ。レクイア───!」
それを見たときにはもう、少年の頭は真っ白になっていた。
そして、走った。逃げ去るためでなく、町の方へ向かうために。
無論、約束のことなど既に彼の頭から吹っ飛んでしまっていた。
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