業火の逃亡

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普段、外側からは入り口となって来訪者を迎える、あるいは拒絶する役割を持つ門。だが完全に崩落してしまったそれは、もはや生み出されたままの役割を果たしてはいなかった。 門だったものの残骸を乗り越えた少年は、そこから見える光景に絶句した。 家という家は砕け散ってただの瓦礫の山と化し、崩れだした瓦礫が道にまで雪崩てきているためにどこが道でどこが建物跡かわからない。 街路樹などはすべて灰と消え、その遺骸を窺うこともできない。 所々に何か黒こげになったものが散らばっているが、それが何であるかはもはや判別できない。 町は、死んだのだ。 そんな町の哀しすぎる惨状を目にした少年を、さらなる打撃が襲う。 見つけてしまったのだ。 一番見たくないものを。
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