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真偽を疑う前に、根拠のない、しかし強い予感が少年を震わせた。少年は震える足を必死に動かして、ゆっくりとそれに歩み寄る。
目の前にある塊は完全に炭化し、原型が何であるかさえわからなかった。だがこの廃墟に他にあるものは焼けて真っ白になった瓦礫やくすんだ黒色の残骸ばかりで、炭になったものはほとんど見当たらない。こうして炭化して残っているものがあること自体が珍しいのだ。
「…………」
原型不明の炭の塊を見つめて、少年は立ち尽くしていた。
炭の周りに散らばる黒い残骸は、その質感から町を襲った“それ”であるに違いない。
……ということは。この場所は少女レクイアと別れた場所に違いない。
「…………」
自分の予想を裏切る事実が欲しい。そう思いながら、少年は炭の正体を探るようにくまなくそれを見つめる。そうすれば答えが得られると言わんばかりに。
「あ…………?」
炭の下に、何かきらりと光るものが見えた。半ば地面に埋め込まれるように……いや、押し込まれたように。
少年は少し躊躇したが、やがて意を決したように、ゆっくりと手を伸ばしてそれを掘り出し始めた。
やがて現れたのは、恐ろしいほどに見慣れた、煤と土埃でくすんでしまった銀色の腕輪だ。
「…………ッ!!!」
それを見た少年の受けた衝撃は、すぐに絶望という実感となって駆け巡った。震えがさらに大きくなり、もはや立っていることすらままならない。
それもそのはず。この腕輪は、この少年本人がせっせと貯めたお小遣いで買い、プレゼントした──少女レクイアがいつも欠かさず身につけていたものなのだから。
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