魔導機関車

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人波の中。そこでは、老若男女、様々な人が行き交う。 そして彼らのすぐ側にある……いや、そびえるという表現の方がむしろ適切なのだろうか。他のものとは桁外れに巨大な機関車が静かに佇んでいた。 「これが、魔導機関車ってやつか……でけぇな、なぁルイン!」 「うん、思った以上だよ。正直驚いた」 二人は今、大きな街の駅構内にいた。山奥の村から下りてきて最初にある街だ。村にはない初めて見るものの数々に、二人はいささか以上に興奮気味になっている。 「こらこら、あまり騒ぐと怒られますよ」 「あ、ごめんなさい」 二人を窘めたのは、家なきルインを引き取って育てたルーカスの一族に、先祖代々の家政婦として長年仕えるマリエッタだ。彼女自身も既に六十歳を越えた老齢ながら、職業柄不在が多い祖父や亡きルーカスの両親に代わり、二人の教育役として色々なことを教えてきた。 「ばぁや、あれってどういう原理で動いてんの?」 ルーカスが指したのは、先ほど感嘆の対象としていた“魔導機関車”だ。見た目は普通の機関車とほとんど変わらないが、動力部に炎の魔力の結晶である『紅水晶』を用いることで、半永久的に運転力が持続する素晴らしい発明……らしい。 (ルーカス……昨日マリエッタさんが説明してたの、もう忘れたのかな…………。いや、そもそも聞いてなかっただけか……) それでもマリエッタが律儀に説明を始めたので、ルインは視線を他にやって新しい発見を探した。
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