業火の逃亡

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見渡す限りが、燃えていた。 生まれ育った家、庭、道路沿いに植えられた木々、よく遊びに行ったあの公園── 思い出に残るようなものもそうでないものも、全てが真っ赤な炎に包み込まれて消えていく。 どうすることもできなかった少年は、そんな光景を恐ろしいほど無表情に見つめている。 いや、はたして『見つめている』と言うべきだろうか?その両の瞳は、まるでガラス玉になったかのように虚ろで、何も映してはいない。 全てが、火の海に消えていく───
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