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ゾクッ。
「…………ッ!?」
辺りを見渡していたルインは突如、背筋に得体の知れない悪寒を感じた。
(な……何……?)
不穏な気配に慌ててその正体を探るが、周りには特に何も原因になるようなものが見当たらない。
「ん、どうかしたかルイン?」
だが、ルーカスやマリエッタは何も感じ取っていないらしい。きょろきょろしているルインを不思議そうに見ている。
「いや……何でもない」
「何でもないって……顔色悪いですよ、ルインさん」
「何でも……ないんです」
マリエッタが心配そうに尋ねるが、ルインは押しきるようにそれを制した。そんな様子をマリエッタまだ気にしているらしく、覗き込むようにルインを見ているが、それ以上の詮索をされることはなかった。
(今さっきの気配……ただごとじゃなかった……)
ルインは再び注意深く周りを見回していく。
だが、その時はもう何の気配も感じ取ることはできなくなっていた。
(何なんだ……?)
ほんの一瞬のことだったので、気のせいであったようにも思える。だが、胸を激しく打つ動悸がそうでないと告げている。
「ルインさん、行きますよ」
「……あ、はい」
マリエッタが呼んでいる。仕方ないので、ルインは謎の気配を辿るのを諦め、マリエッタに着いて歩き出した。
そんな様子を、遠目から見ている人物がいた。腕にネズミのような何かを数匹乗せている。
「おや、危ない所でしたね……。まさか気づかれかけるとは。まったく、彼は一体何者なのでしょうか……?」
ルインたちからは陰になって見えない柱の裏で、彼は静かにつぶやいた。
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