魔導機関車

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隙なく辺りを見回してみるが、やはりそれらしいものは見当たらない。 「どうしたんだルイン、顔色悪いぞ?」 「…………」 やはりルーカスには察知できないらしい。だが、この悪寒の原因は一体何なのだろうか。 「おっと。君、随分と顔色が悪いですね」 ……と、不意に背後から肩を掴まれ、緊張していたルインの体は反射的に振り向いて肩から手を払いとばした。 ピィッ!鳥の鳴き声が鋭く響く。 「……ふむ、それだけの元気があれば大丈夫でしょうが」 背後にいたのは、初老くらいの背の高い男だった。頭には何故か鮮やかな緑色の小鳥を乗せている。鳴いたのはこれだろう。 「あ……ごめんなさい……」 「構いませんよ、ところであなたは一年生ですね?」 謝ったルインに、男はなおも笑顔で問いかける。 「…………」 「あ、はい、そうですっ!あの……ところであなたは?」 黙ったままのルインに代わってルーカスが尋ねた。 「おっと、申し遅れましたね。私の名はラピ=クラッスス。アルバイン魔法学園“初級魔法科”を担当する教師です」 「へぇ、アルバイン魔法学園の教師……ってええっ、先生!?」 男性からの答えに、ルーカスは意外だという声を出した。 対するラピはフフフと楽しそうに笑い、 「ふむふむ、今年の新入生はとても元気が良いようですね」などと、ルインに払いのけられたときにずれていたらしい老眼鏡をかけ直しながらこんなことを言っている。 「そういえば、先程も探検だといってこちらに来た生徒がいましたね。彼にも言いましたが、探検なら前よりも後ろに行った方が楽しいですよ。小さな娯楽施設のようなものがありますからね」 そう言うと、彼はすぐ近くにある階段の方へ歩き出した。今更だが、魔導機関車は二階層構造になっている。 「あ、行っちゃうんですか?学園のこと、教えて貰おうかと思ったのにな……」 「えぇ、すみません、私も自分の仕事がありますからね……そうだ、こんな所で逢ったのも何かの縁でしょう。これを差し上げましょうかね」 ラピは追いかけようとしたルーカスをその場に留め、小さな青い玉を二つ取り出してその手に収めさせた。
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