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気づけば既に、視界全てが赤一色にしか見えないほどに炎は燃え広がっていた。
ゆっくりと迫る炎。
そして、炎の中で不気味にうごめく幾つもの怪しい姿。
それら全てが一体となり、小さな少年の命を執拗に奪い去ろうとしていた。
背筋が凍りそうになるほどに赤く紅く朱く照らしあげられた“それ”の群れは、明確な意志を持っているかのようにゆっくり少年に近づいていく。
対する少年は、“それ”が見えていないことはないだろうに、一歩もその場から動こうともしない。
もう目も開けていない。
ゆっくりと、しかし確実に迫る───死。
少年はその異様な有り様を受け入れたかのように落ち着いて、ただその場に佇んでいた。
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