業火の逃亡

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ようやく街の出口が見えてきた。 そして、少女は気づいた。街を囲う防壁の外は出口の隙間から見える限り、中の惨状とはかけ離れている。恐らく“それ”は限定的に街の中だけを襲っているのだろう。 (範囲指定式……あれが父さんの言ってた“自動式傀儡-オートマリオネット-”か……) だが出口まで一気に走り抜けようとスパートをかけようとしたその時、炎上する脇道から突如“それ”が数体飛び出し、2人は行く手を阻まれた。 「あっ……!」 少年の短い悲鳴。目の前には絶望が降り立った。 「なんなのよ……やっとここまで来たのに!」 だが、諦めない。二人は突破口を探り、周りを見回した。 前には飛び出してきた“それ”の姿が、背後からは先ほどから二人を追い回している“それ”の群れが、左右には突破不可能であろう厚い炎の壁が、それぞれに二人の行く手を阻む。 「囲まれてる……!」 少女が現れたことで遠ざかっていた死への恐怖が、少年の脳裏に再び宿った。 “それ”がじりじりと包囲網のような陣形のまま距離を詰めてくる。カラクリじみた不自然な動きをし、ゆっくりゆっくり、だが確実に二人を捕らえようと動いている。 仮面のような顔面、それぞれがちぐはぐな大きさのパーツを繋ぎ合わせたような体、深淵の深き闇を宿した黒い体色、無機的な金属光沢。近づく度にその姿は周りの炎に明々と照らされ、不気味さを増していった。
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